ひらめの日常

プログラミングと読書と

『教師崩壊』を読んだ

はじめに

本はこちら

日本の教師が危機的な状態にあることを、データも交えながら論じ、警鐘を鳴らしている本です。感想や印象に残っているところ中心にまとめます。

まとめ&感想

冒頭では教員の危機的状況をまとめ論じています。後半ではそれを解決するために、先生の仕事を取捨選択していき、先生以外も今先生が負担している役割を担っていくべきだという主張でした。

自分が学生の頃、先生がどれだけ忙しいか考えてもみなかったでですが、第三者としてその働き方をみると危機感を覚えました。本の中でも言及されていますが、長時間労働が普通の状態になっていて、しかも残業代が出ないというところは根本的に変えていく必要がありそうです。

決まっていく政策や指導要領などをみると、要求だけが無限に増えている 印象を受けます。普通の会社であれば、要求が増えるのであれば人員を確保したり、待遇をあげたりということがあるのですが、教師に関してそのような議論になってるのを見たことがないですね。

正直細かいところは首を傾げる点も多かったですが、全体としては、データを元にして教育現場の危機的状況を伝えている本として読む価値がある本だと思いました。

印象に残ったところ

教師の危機的状況

過労死等のリスクが非常に高い状態で働いている先生は、小中学校で6~7割前後にも上る可能性が示されています。うつ病などで休職を余儀なくされている先生は毎年5000人もいます。実際、この10~20年、教師の過労死、過労自殺はあとを絶ちません

このような危機的な状況にある中で、教師や学校のあり方について、データやファクトに基づいて論じることを目的としている。(これまでは感情論や一部の経験に基づくイメージによって語られることが多かった。)

教師が足りない

まず、そもそも教師の数が足りていない現状がある。

2017年4月の始業式時点で、半数近い32の自治体で、定数(国の示す標準として配置されるべき数)に対して、少なくとも717人もの教員が不足していたことが明らかになりました。

なぜかという理由の一つには、教員採用試験の倍率低下が見られ、さらに深く調査すると、教員免許を取得しても採用試験を受けない人が多く存在する。

小学校では4割近く、中学校では6割以上、高校では8割以上が、教員免許を取得しても採用試験を受けない

倍率が下がっても優秀な人が先生になっていれば良いのだが、現実は違う。実際現場の先生たちも、最近優秀な人材が教員を目指さなくなっていると実感しているデータがあるらしい。
さらに、ベテランの先生たちも自身が忙しいこと、育成するべき人が多いことなどがあり、職場での育成は機能していない学校が増えている。

教師の質が危ない

日本の教育のワースト記録として、以下の二つが挙げられる。(ワーストと表現しているが、あくまでワーストクラス)。

  • 政府が教育にかける予算
  • 教員の労働時間の長さ

世界でも例を見ないほど少ない予算規模でありながらも、日本の子供達の数学や科学の学力がかなり高いのは、教員の長時間労働などによって支えられている部分もあるとされている。

教員向け調査においても、先生の悩み第一位は 「授業準備の時間がない」ことだと明らかになっている。このような状況で良い授業を行えというのも無理がある。

失われる先生の命

過労死ラインは週に60時間以上勤務だが、この過労死ラインを超えて働く人の割合は、特に小中学校では他業種と比べても突出して高い。(画像は本から引用)

  • 過労死だけに限った数ではないが、毎年400~500人の教員が死亡している。
  • 毎年5000人の精神疾患休職を出している。

なぜこんなに労働時間が長くなるかというと、生徒指導や部活指導などで子供と向き合ってきた結果長時間労働をしてしまっている現実がある。

学びを放棄する教師たち

データから見られる長時間労働のもたらしている最大の弊害とは、能力開発の機会損失である とされている。これは学校に関しても当てはまり、教職員の学びの余裕がなくなってきている

全国公立学校教頭会も、国の審議会の場で、本来は教頭は職場の人材育成に時間を割きたいが、そこに時間を割けていないことを訴えている。

自分でも学べないし、他の先生が育成する時間もない。これらのことから、OJTもOff-JTも不十分で育成される機会はほとんどないのが現状。

信頼されない教師たち

神戸市で教師間のいじめ事件が話題になった。この事件もきっかけとなり、教師不信や学校不信がかつてないほど高まったと本では述べられている。
神戸市の教育委員会では、女子中学生がいじめを苦に自殺した事件でも、証言メモを隠蔽した問題もある。

わいせつ行為で処分された教員の数は2018年度に過去最多を記録するなど、教師の不祥事について心配な点も多々ある。

教師崩壊を食い止めろ!

まずは学校の役割の肥大化を食い止めることに注目するべきだと主張している。

学校や教員の役割、業務を、いまよりもっと絞り込んで限定して、その真に大切な部分に時間とエネルギーと予算とを集中してつぎ込んでいくこと
(中略)
子ども一人ひとりに目をかけることを必要とする教育を求めておいて、そのための条件整備にはお金を出さない。時間的余裕も与えない。それでも「自ら学び、考える力」の教育が大切だというのは、欲ばり過ぎというほかない。

登下校や夜間の対応など、「子供のため」という大義名分のために学校の教員が行う仕事が増えてきてしまっている。教員以外ができる仕事に関しては他の人に任せることが必要なのではないか。

教員は特に朝と夜に勤務時間外の仕事が多いが、公立学校の場合は教員の残業代は出ていない(教職調整学で月給の4%が出ているだけ)。(画像は本より引用。)

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文科省有識者、専門家それぞれが自分たちの立場から考えているため、トータルで学校がどうなるか、負担がどうなるかについて深く考えていない。その具体例として、全国学力テストやキャリア・パスポートなどが挙げられる。教師個人ではなく、学校組織全体や社会全体が一つのチームとして課題意識を持ち、本質に目を向けて行動していくことが必要だ。