ひらめの日常

プログラミングと読書と

『子どもがつまずかない教師の教え方10の「原理・原則」』を読んだ

はじめに

本はこちら

子供がどこでつまずいているのかを分析しながら、理論と実践を結びつけることで、エビデンスベースの実践へと高めるための本です。特に優秀と言われる先生の中から、その人たちが実践している原理原則を、認知心理学の視点からまとめています。感想や印象に残ったところをまとめます。

まとめ&感想

理論と実践を結びつけるという本でしたが、個人的には理論についてもう少しつっこんだ記述が欲しかったです。ただ、今まで理論を勉強していても、それがどのように実践されるかについては触れることが少なかったので、橋渡しする本としては読んでいて面白かったです。理論の本は終始理論を語り、実践の本は終始実践をいかにするかを語っている印象があるのですが、その両方を行き来している本としては貴重ではないでしょうか。

特に、狙いとそれに向かうための手段を意識した授業作りが大切 という言葉が印象に残りました。「一斉授業だ」「協同学習だ」のように、学習方法だけに踊らされてしまいがちですが、どのような狙いがあって、どれに向かうためにどのような授業を作っていくかを考えていくのが大切だと感じました。

印象に残ったところ

第1章 学習者検証の原則

学習者検証の原則

「わかる」ことは「できる」の上位概念である。 つまり、少なくとも子供ができていないうちはわかっていないということである。これを教授理論では 学習者検証の原則 という。大事なことは、子供ができていないうちはわかっていないと捉えること。

できていない時は、そのアウトプットである誤答を丁寧に分析し、何をわかっていないのかを知ることが大事

ガニエの学習成果の5分類

授業には目当てや狙いがあり、学習成果の質的な差によって種類が分けられる。学習成果の5分類がそれに当たる。


(画像は本より引用)

手続き的知識・技能の取得と概念的理解

手続き的知識・技能はほぼ全ての子供が習得できる力。その一方で、概念的理解は全ての子供が習得できるとは限らない。

まずは手続き的知識・技能を身につけさせるべきであり、基本的な考え方は教師が教え、反復練習を中心に基礎的な力の定着を図る。

第2章 成長マインドセットを育む

伸びる子に共通するのは、どうしたらできるかを追求する姿勢。これを心理学では 成長マインドセット と呼ぶ。困難な課題に直面した時、やればできると考える傾向のこと。

これと反対なのが 固定マインドセット で、失敗は恥ずかしいと捉える傾向のこと。

子供の成長マインドセットを育てるためには、以下のようなことが大事。

子どもの成長マインドセットを育てるためには、教師自身が成長マインドセットをもつことが大切です。これは学習者検証の原則とも大いに関係があります。子ども達ができていないうちは、上手く教えることができていないと考えるのです。

第3章 「算数」で読解力を底上げする

読解力は数学・科学的リテラシーと関係している。また、算数の読解力は次の3つの項目で伸ばすことができる。

  • 精緻化:詳しい情報を付け加えること(時速xkmとは、1時間にxkm進むなど)
  • 要約:文章題で問題文が何を問いかけているかを読み取ること
  • 例示:わかりやすい数字に置き換えること(分数を一旦整数に置き換えて考えるなど)

文章題はただ読ませるのではなく、狙いをはっきりとさせて読み取ることが大事。

第4章 アウトプットを意識する

算数でのつまずきの3大要因は 計算力の欠如、読解力の欠如、公式や解法を思い出せないこと

記憶の3つのプロセス

記憶には3つのプロセスが存在する。

  • 記銘:覚える。頭の中へ情報を取り込むこと。
  • 保持:覚えている。長期記憶に保存された情報は基本的には消えないこと。
  • 想起:思い出す。長期記憶から情報を取り出すこと。

この中で 想起が一番大事なプロセス。繰り返し思い出すことを通して、すぐに思い出せるようになるのが覚えたという現象になる。

テスト効果

小テストをしたり問題を解いたりする方が学習効果が高いということ。これをテスト効果という。例題を解いた後に、累代を解くという問題演習型の授業は効果的。

復習の方法

  • 間違えた問題を中心にやった方が効率的
  • 何回も覚えた内容を勉強し直す分散学習が効果的。復習→忘れる→再復習の繰り返しが、学習内容をより強化する。

第5章 スモールステップで始める

まずはできることから始めるのが大事。数式の原理を覚えられない時は、まずは音読してみるのが良い。声に出して言えないものは覚えられないので、音読は覚える前に効果的。

第6章 ワーキングメモリーを節約する

ワーキングメモリーとは、例えば暗算を行うような情報操作を行う短期記憶の一つ。短期記憶の中でも高度な認知的活動のことをさす。ワーキングメモリーには限りがあるので、余計にワーキングメモリーを消費しないためにも、まずは読めるように音読したり、暗唱したりすることは大事。

第7章 視覚化してイメージで捉える

特に4年性以降での算数のつまずきの大半は、具体を抽象化できないこと、抽象を抽象で捉えられないこと。 具体的に視覚的にイメージできるようにすることは対策の一つとして有効。見た目の数値に捉われるあまり、具体的にイメージすることが難しくなっていることがある。

第8章 学習方略を身につける

守破離の精神で学習者に接する心構えが必要。この心構えを持つことで、次第に子供に自ら学ぶ姿勢や方法が身につく。教師が子供に例示する学習方法を通じて、学習方略を子供が身につけることが大切。

視覚化してイメージすることも、ほとんどの子供がそのように考える思考の習慣がついていない。ここでも教師が解き方を例示し、子供が実際に考えられるようになるまで根気強く指導することが必要。

第9章 メタ認知を促す

メタ認知とは

メタ認知とは、「わからない」ことが「わかる」ということ。多くの子供にそのようなメタ認知能力が初めから備わっているわけではないのに、ドリル学習や家庭学習によって勉強する内容ややり方を子供に任せるのはおかしな発想である。

ちなみに、自学ノートでは解き直しをさせるのが効果的。正答率が8割程度のものを解き直すのが最適とされている。

メタ認知には行動が伴う必要がある

メタ認知できるということは、新たに具体的な行動目標を立てられるということ。メタ認知を子供に促す際には、精神論や根性論で指導するのではなく、具体的な行動を支持することが必要になる。(例:メモしましょうと伝えるだけではなく、その場で実際にメモを取らせる。)

学習の振り返り時には、認知的な枠組みや行動を再確認することが必要。

  • 認知的枠組み:自分がどのような間違いをしていて、どうすればその間違いを修正できるかということ。
  • 行動様式:認知的枠組みを踏まえて、具体的にどのような学習行動を取れば良いのか振り返ること。

第10章 ピア・ラーニングを取り入れる

ピア効果とは

ピア・ラーニングとは、学び合いのような協同的な学習のこと。そもそも学力に影響を与える要因として、学級での児童生徒の行動が重要とわかっている。ピア効果とは、能力が高い集団に属していることで、お互いを高める効果が生まれるということ。

ピア・ラーニングが効果的な理由は、協同的な学習と個別的な学習を併用することが、個々の学習を促しているからである。

個別学習と協同学習

個別学習と協同学習は対極の概念ではない。学習成果という狙いがあり、それを達成するための手段として、指導・学習形態が様々に存在しているだけである。

協同学習がうまく機能するには、学習者の3つの要素が関係している

  • 類似性:年齢は語彙力などの認知レベルが近いこと
  • 互恵性:お互いのやりとりが双方の学びにつながること
  • 自発性:お互いのやりとりが自発的に発生すること

この目標を達成するには、具体的な手立てや問題解決の過程が対話によって仲間で共有される必要がある。こうすることで、学習者が迷うことなく、目標達成のために行動することができる。

学びの個別最適化

教師は原理原則を教えたうえで、協同学習を行う方が効果が高い。一斉授業+協同学習や個別学習のハイブリッド型授業は柔軟性が高く、どの子供にも伸び代がある授業設計。

授業で授業で対話を重視するあまり、読み書き計算のような反復練習が疎かになっていることも多い。やはり基礎基本は反復練習を中心とした学習を重視するべき。

  • 概念の理解や思考は、対話を中心とした協同学習で身につける
  • 手続き的理解や技能は、反復練習を中心とした学習で身につける

という、狙いとそれに向かうための手段を意識した授業作りが大切